Archive of published posts on 3月, 2014

Back home

16/03/2014

03/16/2014

 

 

 

 

 

 

 

ほぼ1ヶ月ぶりに、カメラに入りっぱなしになっていたメモリーカードの中身を読み込んだ。最初に出てきたのは、くらくらするほど眩しい、カシという町の写真だった。

 

 

南仏へ行ったのは、2月の16日から20日まで。エクス=アン=プロヴァンス、マルセイユ、ル・カネ、ヴァンス。いくつかの町で、美術館を見て歩いた。そして最終日に行ったのが、この海辺のちいさな町だ。

 

海辺の町については、前にもここに書いたことがある。同じ南フランスのマントン、ウェールズのスランデュドゥノ、スペイン・カタルーニャ地方のシッチェス、それからスウェーデン・ゴッドランド島のヴィスビィ。去年の11月に行った、コーンウォール地方のセント・アイヴス。3年半におよぶ留学生活で、根元から折れてしまいそうなときにわたしを救ってくれたのは、いつも冗談みたいに明るくて、なにもかもが穏やかで優しい、こういう美しい町だった。そして今度も。

 

カシには、美術館を見に行ったわけではなかった。だから、特別なことはなにもしなかった。町をぶらぶらと歩き、教会で静かな時間を過ごし、石段に座って地中海をただ眺めた。お世辞にも美味しいとは言えない昼ごはんを食べ、文句なしに美味しいお菓子を買った。

 

わたしは心の底からひとりで過ごす時間が好きなのだ、寧ろなによりそれを愛しているのだ、と気がついてしまったときは、暗澹とした気持ちになったものだった。そんなの他人を傷つけるし、自分を孤独にするし、いいことないじゃないか、と思った。けれど、こういう場所でぼんやりとしてただただ癒されたりしていると、この性質もわるくないかもなと思える。遠く離れた場所に大事なものがあるから、そのうえに胡座をかいているだけかもしれないけれど。

 

 

日々の課題にプレゼン、それから論文(わたしのコースはなんと英語で書く卒論のほかにスウェーデン語で書く“Advanced Project”なるものがある、同じテーマは選べないので卒論を2本書かなければいけないようなものなのだ)、と慌ただしく過ごしているうちに、誕生日を迎えてまる2週間が過ぎた。あと2週間で、4年間の授業を全部終えることになる。それから論文とエッセイの執筆が佳境に入り、最後に試験。気がついたときにはきっと、もう6月になっているにちがいない。

 

いまは、留学生活のなかでできあがったこの自分がもうすぐいなくなってしまうかもしれないことに、いてもたってもいられないような恐ろしさを感じながら日々を過ごしている。正直論文より試験より、それがいちばん怖い(いや、卒業できなかったらどうするよって考えるとそれも相当怖いけど)。合計3年を過ごしたこの町を離れて自分がどうなるのか、わからない。想像がつかない。だって4年前の自分は、もうはるか遠くにいるのだから。

 

恐怖を感じないように残りのロンドンでの日々を過ごすことはきっとわたしにはできないけれど、それでも、ここでの最後はこうありたいっていうのはある。それを演じきりたいと、思っている。

 

 

 

先週ターナーの展示を見に行った海洋博物館。ここにも、もう春が来ている。

No Comments