06/09/2013

by lumi on 09/5/2013

 

ロンドンへ戻る日がいよいよ近づいている。

 

2ヶ月におよぶ日本滞在、色々なことがあった。当初やろうと思っていたことは半分もできなかったけれど、帰国のたびに会っている人たちの多くには、今回も会えた。スウェーデン語の先生を幸運にもつかまえたことや、イヤープロジェクトを積み残していたこともあって(これはまだ終わっていない)、勉強もした。京大前の進々堂には随分お世話になった気がする。買い物へ行ったし、テレビもそれなりに見た。夜にはしょっちゅう散歩へでかけた。ぐるりと大回りして、帰りに閉店間際の本屋に寄る。それが楽しみだった。

 

長崎と、それから東京へも行った。大学時代からの友人たちとは、レンタカーを借りて那須まで足をのばしたりもした。動物たちと戯れて、美味しいものを食べて、よく笑った。彼らと会ったあとに振り返るといつも、可笑しかったなあ、でも具体的になにがあんなに可笑しかったのかなあと思うんだけれど、そんな感じでもう十年が過ぎている。

 

 

リビングの机の上には、その日郵便で届いたわたしの三冊の本が置かれていた。ヴォルター・グロピウス『建築はどうあるべきか』、ポール・オースター『ムーン・パレス』、サマセット・モーム『サミング・アップ』。母は帰ってきたわたしに、その本をさしながら「人生、楽しいこともたくさんあるわよね」と言った。目に涙をためて。

 

不穏にとぐろを巻く灰色の感情を残して、日本での夏が去っていこうとしている。

 

 

 

幸か不幸か、わたしたちの実体は、泡のように消えてなくなったりはしない。天地がひっくり返るような思いをしても、そうして負ったちりちりと焼けるようななにかを庇っても、明日はある、つづいていく、とにかく今のところは。つづいていくことを、祈っている。

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