23/09/2012

by lumi on 09/23/2012

 

寒い北ドイツでの、束の間の現実逃避。

 

 

2日目の朝。週前半の疲れと前日の睡眠不足で、しっかり眠ったのにまだ体が重く、起きあがれない。10時を過ぎてようやくベッドから這い出し、身支度をすませて中央駅へ向かった。50人待ちのカウンターに怯みつつ、ブレーメンまでの安いチケットを購入。ワッフルとコーヒーを買って、慌てて電車に乗り込み、流れる景色をながめながら食べる。

 

 

 

ブレーメンの中心部は、想像していたクラシックなドイツそのままだった。華やかな建物も比較的質素な建物も、どことなく硬派で、重さのある感じ。そのなかで市庁舎はやっぱり、圧倒的な存在感があった。建てられたのは15世紀のあたまごろ(ただし、ルネッサンス様式のファサードは17世紀ごろ)らしい。目の前をカラフルな車体のトラムが走るたびあまりのちぐはぐさに混乱し、建物とトラムどちらかが幽霊かなにかのような気がして胸がざわざわした。

 

 

 

ブレーメンといえば、の音楽隊。でもそういえば彼らは最終的に、森のなかの家で音楽を奏でながら仲よく暮らすから、ブレーメンへは行かないのよね。笑。

 

 

 

ゆるゆる散策して、お茶を飲み、帰路につきました。いかにもブレーメンな駅の壁画がすてきだった。

 

 

そして最終日の昨日はハンブルクからデンマーク方面へ向かう途中にある古都、リューベックへ。ハンザ同盟の盟主として繁栄した町、そして作家トーマス・マンが生まれた町。

 

 

 

町の中心部らしきところを歩いてみてもいまひとつよくわからないというか、ぴんとこないので、聖ペトリ教会の塔に上ってみるなど。見下ろした町は驚くほどに美しかった。迷ったら、高いところへ上るにかぎる。

 

 

 

マリエン教会はブリック・ゴシックの尖塔を持つ、巨大な教会。もともとは13世紀から14世紀にかけての建築だそうだけれど、1941年の空襲で大部分が破壊されてしまい、今の建物は戦後復元されたものらしい。それを聞いて、なんとなく納得した。独特の包みこむような優しさは、復元した人たちが願いを込めたからなのかもしれないと本当に思う。温かな光に映える暖色の褪せた装飾は、特別な信仰がないわたしのことも、平等に癒してくれた。

 

 

 

柱の装飾は、一本一本違う。側廊をぐるりと歩き、立ち止まっては見惚れた。

 

そうそう、この教会のパイプオルガンは、なんと8512本(!!!)のパイプからなっているのだそうです。世界最大級だって。青年時代のバッハはこのオルガンの音色とオルガニストだったブクステフーデの演奏に感銘を受け、休暇を延ばして通いつめたのだとか。ほぉぉ。聴きたかった、、、!

 

 

帰りはまた、途中でフェリーに乗る電車。リューベックからコペンハーゲンまでは4時間。いつも通りコーヒーを買って乗り込み、雨の雫を横目に、楽しみにとっておいた本のつづきを読む。

 

 

この本は、実家の近くの本屋さんで買った。外国文学が平積みにされているテーブルで、少女趣味な(失礼)カバーは異彩を放っていた。必然的に目が止まり、すてきなタイトルだなと思った。ゲイルズバーグの春を愛す。原題のI Love Galesburg in the Springtimeより、こっちの方が断然すてきだ。

 

ファンタジー短編集で、どの話も好きだったけれど、なかでも「大胆不敵な気球乗り」が気に入った。主人公のチャーリイが妻と娘が留守の夜、手づくりの気球でサンフランシスコの夜空を散歩する。人々の生活のすこしだけ上を、ほとんど気づかれずに泳いでゆく。二度目は近所の奥さんとティーンエイジャーのように冒険する。ただそれだけなんだけれど。でも、そのあとチャーリイが満足して、三度目はないのが、とてもいい。

 

短い旅の終わりに、読みたかったものを読んだ気がした。わたしが冒険に満足する日も、いつか来るのかしら。

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