20/02/2014

by lumi on 02/20/2014

 

 

 

海と湿原の狭間に現れた蜃気楼のような町、どこまでも続きそうな湿原を行く白い馬。

 

頭のなかでいまも、鳥の声と、馬の蹄の音、草をかきわける音が響いている。

 

 

 

サント・マリー・ド・ラ・メールは果てしなく明るい、美しい町だった。白い壁と褐色の屋根が並ぶ、フランスにスペインの香りが混ざった町。教会の屋根に上ると、南には真っ青な地中海、北には湿原が家々のむこうに広がっている。

 

 

 

 

 

湿原では飛んでいくフラミンゴの群れ、湖を泳ぐビーバー、草地を駆ける馬、色々なものを見た。もうなかなかできないだろう、貴重な経験。正直「白馬に乗って野生のフラミンゴが鳴く声を聴いた」なんてもはや非現実的ですらある(あらためて口にすると、嘘でしょう、って感じだ)。けれどその一方で、あの場所にはなぜだか日常生活の延長のような、穏やかな空気がひっそりとあった。

 

ただ特別というんじゃない、等身大の体験だった、と、思う。

 

 

 

余すところなく美しい風景が、ただ、そこにあったということ。凪いだ思いを過不足なく表現する言葉を、わたしはまだ持っていない。

 

 

 

わたしを乗せてくれた馬は食いしんぼうなうえ怖がりで、美味しそうな草を見つけては食べ、水たまりを見つけては避け、とどこまでものんびりしていた。こらー、しっかりー、といちいち慌てるわたしを横目に、前を行くガイドのお姉さんは馬の背中のうえで煙草をくゆらせ、潔い煙を吐いていた。

 

美しい場所での、美しい一日だった。

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