26/11/2012

by lumi on 11/26/2012

 

雨が降る

 

夜の雨は音をたてゝ降つてゐる

外は暗いだらう

窓を開けても雨は止むまい

部屋の中は内から窓を閉ざしてゐる

(尾形亀之助『尾形亀之助詩集』収録「雨になる朝」より)

 

雨の日にはよく、尾形亀之助の詩を思い出す。江國香織の小説『ホリー・ガーデン』で果歩が暗誦していたのに憧れて、あとがきにあった名前だけをたよりに、わたしはこの詩集を探しに行った。いつだったかもうあいまいだけれど、20歳くらいのときだった、と思う。新宿の紀伊国屋書店。雨の夕方だった。

 

それにしても当時のわたしは本当に『ホリー・ガーデン』が好きだった。そこに出てくる魅力的だけれど痛々しい女性たちと、救世主なのかただ残酷なのか判然としない男性たちを愛して、何度も何度も繰り返し読んだ。21歳ではじめて海外へ出たときも、持っていった。「読み慣れたものがそばにあると落ち着くから」という、いまのわたしからするとちょっと考えられない理由で。

 

あの頃みたいな本の読み方をすることはもうきっとないと思うし、江國さんの作品も、実はながいこと読んでいない。だけどあれはあれでわたしの根の一部であることには変わりないか、と、雨の日、尾形亀之助の詩がふわっと降りてくるたび思ったりする。

 

そういえば今夏、梨木香歩の本を何年ぶりかで読んだ。『村田エフェンディ滞土録』という作品だったのだけど、読みながら随分泣いた。新鮮だった。梨木香歩も20歳過ぎくらいの頃出ていたものを繰り返し読んでその後離れていた作家さんだけれど、今読むとこういう気持ちになれるものなのだなあ、と思った。江國さんの本も、今なら別のもののように映るのかもなあ。そう思うとあらためて読んでみたいような、あえて読まずにそのままで置いておきたいような。

 

 

ルンドにはわたしの日本での母校から交換留学で来ている現役大学生の子たちがたくさんいて、彼らと話しているとときどき、20歳そこそこだった頃の自分の影が横切る。自分のことは思い出したくない反面(人生是黒歴史!!!)、若い子たちを、とても可愛いと思う。年齢関係なく付き合いたいと思っているし、可愛いっていう言葉は失礼かもしれないけれど、もう本当に愛でたくなるのだ。

 

なつかしい、日本の大学生の空気。ちょっとの倦怠感と、なんともいえない眩しさ。

 

 

「もっと連絡して」「メールには、できれば次の日には返信して」「不安にさせないで」

ってはっきり言えないのは、肝がすわってるからじゃなく、ただいくじなしだから、なのです。

 

口にしていいのか迷いに迷って「もっとこうして」って言うより、笑い飛ばすほうがきっと簡単だよ。

 

 

 

日曜らしい朝昼ごはん。コーンフレークにヨーグルト。バナナ、キウイ、ブルーベリーとオーブンでローストしたくるみを散らしていたらすっかり楽しくなって、気づいたらちょっと歌ったりなんかしていた。

 

晩ごはんは置いていたものに、ちょっと作り足し。そういえばルンドに来てから、晩はまだ片手で数えられるほどしか外食をしていない。

 

さて、また、あたらしい一週間が始まるんだなあ。

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